弁護士会で税務調査についての研修会がありましたが弁護士向けではありましたが、弁護士以外の方にもお役に立つのではないか思いますので内容について掲載します。
1.はじめに
今回のテーマは「税務調査」でした。弁護士の顧問先や相談者の税務調査ではなく、私たち、特に、独立して法律事務所を経営なさっている方が税務調査を受ける場合の留意点などについて解説頂くという内容でした。
2.研修内容について
さて、研修の内容ですが大きく分けて2つ、まず「税務調査の流れ」についてお話があり、次に、「税務調査の注意点」についてのお話がありました。
(1) 税務調査の流れについて
税務調査のながれについては、私たちもなんとなく知っているのですが、正確な知識を持ち合わせておらず、今回基本的な流れを丁寧にご説明頂きました。
具体的流れとしては、①事前通知、②実地調査、③調査終了の際の手続き(調査結果の説明、修正申告の勧奨、更正決定など)、④再調査ということになります。
税務調査は国税通則法、事務運営指針(国税庁のホームページから参照可能とのこと)などに則りなされるとのことも改めて確認することができました。
特記すべきこととしましては、処分についての理由付記がありました。
更正決定等の全ての処分については法律改正があり、従来は、行政手続法8条(申請等)及び14条(不利益処分)は適用除外とされていましたが、理由を提示することが法定化されたとのことです(国税通則法74条の14)。税法関連の手続きも進化しているということでしょうか。
(2) 税務調査の注意点について
税務調査の注意点については次のようなことについてご説明を頂きました。
① 準備書類としては3年分の帳簿、経費の資料、売上資料、人件費関係、その他通帳などですが、3年前のものが調査対象になってきますので、例えば交際費などについては誰との交際費用であったかなどについてはしっかりと記録しておくことが必要とのことでした。思い出して対応することは難しいですので。
② 調査項目としては、売上の確認、経費の確認ですが、注意点としては売上計上漏れ、売上計上の期ずれなどのご指摘がありました。また経費については家事関連費との区別が重要で、当然のことながら家事関連費用は経費にならないこと、交際費は相手先の記入が必要なこと、青色専従者給与については必要要件(専従者届、事業に専ら従事することなど)の充足をしているかなどについても基本的な事項をご説明頂きました。
③ 興味深い判例のご紹介
・「弁護士会の役員活動に伴う懇親会費等も必要経費と認められた逆転判決」(2012.9.19 東京高裁判決、平成23年(行コ)第298号)、
・「弁護士の大学院等進学授業料の必要経費算入を否認」(国税不服審判所、2003.07.29裁決)、
・「税理士が妻に支払った青色事業専従者給与は著しく高額と判断」(2013.05.29 国税不服審判所裁決)、
などなどとても興味深い判例、裁決のご紹介もしていただき、経費認定についての問題について注意喚起されました。
④ 法定調書(給与所得の源泉徴収票、報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書など)、資料せん等、マイナンバーについてもご説明を頂きました。
以上のように大変盛りだくさんな内容をコンパクトに分かり易くご説明を頂きました。
3.質疑など
ご説明の後、質疑応答では、税務調査と弁護士の守秘義務との関係、経費としての認定について、税務調査の裏付け資料となる「資料せん」などについても質問がなされました。残念ながら時間が押してしまい十分な質疑応答が出来なかったことが惜しまれます。
4.感想
今回の研修は、税務全般についての説明とは違い、実際に私たち会員が税務調査を受ける機会があることもあり、参加者はとても真剣に受講していたように思います。なお、調査を受ける比率は平成23年で1.4パーセントとのお話でしたが、今後多くの会員が税務調査を受ける機会があるかと思われ、その際には、この研修を踏まえ適正に調査を受けることが出来ればよいなと思う次第です。